2010年6月11日金曜日

Genalex Gold Lion KT88


TU-8300が組み上がったら真っ先に買う出力管は、このゴールド・ライオンのKT88と決めておりました。
オリジナルのイギリス製GEC(Gold Lion、Gold Monarch)の音をやはり聴いてみたいところですが、入手は非常に困難みたい。辛うじてGECは手に入るが、とても現実的な値段ではないな。宝くじにでも当たったら買ってみようかな。
真空管を酷使するヘビーユーザーは、ロシア製を購入した方が賢明のようです。
リイシューと言えどゴールド・ライオン、キングの風格がありますな。


何となく、300Bよりも収まりが良くしっくりくる感じがします。
真ん中の電源トランス、こんな剥き出しになってるアンプは他にないですよね。機械っぽくてアクセントになってて、まーいいかな。

さて、五極管の回路は初の電源投入になります。UL接続の改造も施してるので、一方ならぬ不安がありましたが、いきなりボ~ンなんて事にもならず無事通電できました。
このアンプは出力管に過大電流が流れた時、シャットダウンする回路が組み込まれてて、スピーカー保護の観点からも有難い機能です。

まずは、三結の音ですが、自分のシステムからこれほど優しく、透き通るように美しい高音の響きが出るとは思いもよりませんでした。倍音が良く出ております。これはプリ管のムラードとの組み合わせに因るところが大きいのです。JBL4312Dの潜在能力も計り知れないものがありますが。中低音はちょっと緩いが豊満で、実に肉感的。
ゴスペルのクワイアなんかは、宛も教会で聴いてるような響きで感動的です。ジャズ・ボーカルやソウル辺りもいいな。聴かないけどクラシックも十分いけそう。

一方、UL接続はというと、全体的に締りが良くなってタイト。高音の響きは落ち着くが、その分、中域が迫り出して押し出してくるので、凄くダイナミックなサウンドになります。ベース・ラインは非常に生生しく、リアリティがありますね。ウッド・ベースはさらに良い。ジャンプ・ブルースやロッキン・ブルースを聴くにはこの音でなければいけません。
UL接続にしておいて良かったとつくづく思います。


真空管の光も真空管アンプの魅力のひとつ。和みますね。

プリ管、出力管、三結、UL接続の組み合わせで、色んなサウンドが楽しめる事が分かりました。シングル・アンプの成せる技でもあろうかと思います。

その他の出力管もぼちぼち買い足して、楽しみたいと思ってますが、
ムラード12AT7とゴールド・ライオンKT88の組み合わせをUL接続で鳴らす。
これで一先ずオーディオは一区切りつけたいと思います。

あとは、思いっきり「ブルースを聴こう」です。

2010年6月6日日曜日

電圧増幅管 12AT7

TU-8300のバイアス調整をしてみました。
このアンプは自己バイアスなので、KT88やEL34、6L6GC辺りの差し替えだったら調整の必要はないのですが、部品交換を色々やった自作品なので、本当に標準設定の電流が流れてるのか、左右のバランスは合ってるのか調べてみました。
バイアス調整なんて今までやった事なかったし、電気が流れてる所にテスターの先を突っ込むなんて、この部分だけなら精々5V~8Vと分かってはいても正直恐怖。実際にやってみるとなんてことはなくて拍子抜けだったのですが。
右が62mA、左が60mAだったので、右も60mAに調整しました。これで大体6Wの出力が出てるそうです。6W!え~!ですよね。サンスイだと100Wでしょ。高出力=高性能=高音質という概念は脆く崩れ去ります。実際に聴いた感じだと60Wは出てるんじゃないかなと思える程のパワーですね。真空管は凄いや。

さて、前置きはこの位にして、今日の本題は電圧増幅管12AT7。
「初段」とか「プリ管」とか言われておりますが、その名の通りオーディオ信号を最初に増幅する所ですね。ここん所の真空管を替えるだけでも結構音が変わるらしいんだが、やってみなければ分かりません。で、今回奮発して2種類の12AT7を購入しました。


左から付属の中国製、イギリス製のムラード、アメリカ製のフィリップスです。
フィリップスはアメリカ軍用のニュー・オールド・ストック(NOS)管、ムラードはイギリス軍用のNOS管で、共に80年代製のようです。

どちらも中国製と比べるとレンジが広がって、高音の響きがとても良い。
フィリップスは兎に角シャープでスッキリした感じ、ギターやハーモニカの高い所がたまに耳に刺さって、ちょっとまだ硬いかな。中低音も引き気味。全体的にカラッと明るい音はアメリカっぽいなぁという感じがします。
その点、ムラードはバランスがかなり良い。艶があって色っぽい高音は、どんなイジワルな曲をかけても決して耳に刺さったりしない。特に特筆すべきは深みのある中低音で、ウッドベースの音なんかたまらんですね。全体的にシットリとした感じは、イギリスの気候みたい。(ご承知と思いますが、これはあくまで主観的な感想です)
NOS管はエージングに時間が掛かると聞き及んでます。フィリップス管を使い込んだ時、どんな音になるか興味はありますが、ついついムラードを使ってしまうなこれは。
しかし、音と地域特性を無理やりこじつけてしまったが、ドイツのテレフンケンや日本の東芝だったらどんな感じかな。

2010年6月1日火曜日

ELEKIT TU-8300

JBL4312Dの音に惚れてしまってからというもの、今度は真空管アンプで鳴らしてみたいという欲望が沸々と湧いてきた。

さて、どの機種にしようか。

どうせならキットを組み立てた方が安上がりだし面白そうだ、と思い付き、
初心者に優しいエレキットを物色。

ロッキン・ブルースを元気良く聴けるのは、やっぱりビーム管だろうと思い、最初はKT88専用に組み直されたTU-879SVを買うつもりでいましたが、ふと、300BシングルステレオパワーアンプTU-8300が目に入った。
300Bは湯布院で聴いたウエスタン・エレクトリックのイメージがあり、ロッキン・ブルースには合わないんじゃないかなと思って、高価だし最初から除外していた。
しかし、このTU-8300というアンプは、五極管やビーム管の三極管接続(三結)が出来るらしい。要するに、KT88(6550)やKT66、EL34(6CA7)、6L6GCを改造なしで差し替え出来るという事らしいです。何とも欲張りでユニークなアンプなのでしょうか。これに決定です。500台限定なので市場に残ってるうちに慌てて購入しました。


いきなりですが、ジャジャ~ン、完成しました。
整流管がないのはちと寂しいですが、シンプルでバランスの取れたデザインは、すっきりとしてて結構気に入ってます。
TU-8300をご存知の方は一目見て、パーツ交換したなとお分かりかと思います。
購入して中身を見たら、あまりのパーツの多さに果たして完成させる事が出来るのだろうかとちょっと怖気付きました。何せアンプ作るの初めてだったものですから。
何も慌てて作る必要もないので、ここは一つ回り道して真空管アンプの原理なるものを勉強してみる事にしました。しかし、難し過ぎて回路や数式なんかチンプンカンですよ。一通り読んでいくと、このアンプにも関係のある三極管接続(三結)の項目は興味深かった。

五極管は高出力だが内部抵抗が高い為に、高音キンキン、低音ボンボンの音になってしまう。ギター・アンプはその方がカッコいい音になるが、オーディオだととても聴けたものではない。だから、負帰還(よく理解してないのだが)をかけて内部抵抗を下げるとオーディオ的には良い音になるということか。その点、三極管は元々内部抵抗が低いので扱い易いが、球の種類が少ない。そこで、種類の多い五極管を三極管接続して色んな音を楽しもうという訳だ。しかし、三結にすると最大出力が大幅に落ちてしまうらしい。ここが気になる所なんだな。大体このアンプには300Bという三極管が付いてるのに、パワーダウンする三結にしてまで三極管ぽい音を楽しむ必要があるのか。どうせならパワーのある五極管の音を楽しみたい。

ところが、あるんですねウルトラリニア接続(UL接続)というのが。何れ負帰還(NFB)も勉強してみるつもりだが、とりあえずこのUL接続だ。この接続方法は五極管と三結の中間の特性で、内部抵抗も抑えられ、パワーもそれほど落ちないらしい。これは美味しいじゃないですか。SGタップ付きの出力トランスが必須となるが、配線方法は意外と簡単で、SGタップと220Ωの発振防止用抵抗を取っ払った4番グリッドとを接続するだけ。この程度なら自分にも出来そうだ。なかなか面白くなってきました。

他に参考になる事はないか、TU-8300を改造されてる方はいらっしゃらないか調べました。居られましたよ。その方はスイッチを設けて三結とUL接続を切り替える改造をされてました。なるほど、これで300B、三結、UL接続を一台のアンプで楽しめるって寸法だ。感服致しました。有難くそっくりそのままパクらせて頂きました。有難うございます。

あとはパーツ類の交換かな。パーツの良し悪しが音の良し悪しを左右すると、勉強してる中で散々聞かされてましたし、特にエレキットは質の良いパーツに交換すると、見違えたように音が良くなるそうです。熟知された方でしたら、どのパーツをどう組み合わせればどんな音がでるか、大凡の見当がつかれるかと思いますが、その辺、さらにサッパリですので、さらに調査です。調べ物ばかりしてたような気がしますよ。

投資できる範囲で気になった物を取り寄せました。
まずは、一番肝心な出力トランス。UL接続にする為、SGタップ付きが必須です。非常に高価で、目が飛び出ましたよ。ギリギリいっぱい頑張って、タンゴトランスのXE-20Sを選びました。上の写真に写ってるヤツです。

カップリングコンデンサも音を良くする為の重要なパーツ。東一のVitamin-Qオイルペーパーコンデンサにしました。最初はモヤッと曇ったような音がするが、エージングが進むと艶のある色っぽい高音とふくよかな中低音になるそうである。あと湿度に強いという耐久性も考慮しました。後で交換することは可能なので、あまり神経質にならず手頃なものを選びました。
付属してた炭素皮膜抵抗器を、タクマンのREYオーディオ用金属皮膜抵抗器に交換。
ボリュームはマルツパーツのRD925G。安い上に東京光音2CP601と変わらない良い音がすると一部評判になってました。
追加部品としてトグルスイッチ2個、出力トランスの配線用にベルデンの銀メッキ線を購入しました。こんなところかな。

さーて、組み立てに入ります。初めてなのに改造まで加える訳ですから、慌てず何週間掛かってもいいという覚悟でじっくり行きました。
ハンダはオヤイデ電気のSS-47という音響専用の無鉛銀を使用。このハンダは解け易くて、流れ込みもいいので非常に使い易いです。仕上がりも綺麗で、メッキがキラキラしてるのは本当に気持ちがいいものですね。
組み立ては順番通りにやっていけば意外とすんなり行きまして、難し過ぎず易し過ぎずで、自分には丁度良い頃合でした。


約1週間で完成しました。ほんと楽しかった。
直熱三極管300Bと電圧増幅管12AT7(どっちも中国製)を差し込みます。

いよいよ初の電源投入です。緊張しますね。
25秒のウォーミングアップ。LEDが点滅して、12AT7がぼんやり光ってきました。
焦げ臭い臭いもしないし、ショートもしない。リミッターの動作チェックも問題なし。
今度はCDプレーヤーとスピーカーに接続ですが、いきなりJBLを繋ぐのは恐ろしいので、引退したダイアトーンDS-500に接続しました。
一番緊張した瞬間でした。ボリュームを軽く捻ってみたら、うぁ、音が出た~。
もう、これだけで感動しました。再度、リミッターの動作チェックも問題なし。マニュアル的には合格です。とりあえず一安心。

心配していたハムノイズですが、スピーカーに耳を近づけたら若干聴こえる程度で、全く支障ないですね。ハムバランサの調整は必要ないみたい。しかし、立ち上がった瞬間の「ブォ~ン」は真空管アンプらしくて、なんかゾクゾクしますね。自分だけかな。

暫くは様子見で、DS-500で試聴することにしました。
最初、音が奥に引っ込んでましたが、ボリュームをさらにグッと捻ったら、喉に支えてたものが飛び出すが如く前に出てきました。
高音には定評のあったDS-500ですが、これほど澄んだ高音が出るとは。低音は元々ダメなのですが、それでもそこそこ頑張ってるし、こんな良い音が出るとは思わなかったな。これはJBL、期待できそうだ。

CDプレーヤー : DENON DCD-1650AR
真空管アンプ : TU-8300
スピーカー : JBL 4312D
RCAケーブル : Belden 8412
SPケーブル : Belden 8460

我が家のシステムはこんな感じになりました。このアンプだけではレコードは聴けないんですよ。これは今後の課題です。
さて、一発目は大好きなブラウニーのストリングスを聴いてみました。
レンジの広さや定位感はサンスイのアンプとあまり変わらないように感じますが、高音の質感は全く違いますね。ブラウニーのペットやストリングス共に、艶やかで生き生きとしてて水水しい感じ。以前、4312Dの高音は荒いと言ってしまったが、あれは訂正しなければなりません。鳴らしきれてなかったんですね。中低音もふくよかで厚みが増してます。やっぱり、自分で組み立てたアンプで聴くブラウニーは格別。感無量です。

今まで聴き馴染んだアルバムを取っ替え引っ替え聴いておりますが、全体的に明るくて元気いっぱいのサウンドです。エッジの効いたほうがカッコいい曲だとちょっと弱いですが、迫ってくる力強さや低音の迫力、かなり良いです。サンスイも迫力のあるアンプですが、その迫力の質がどうも違うように感じます。これがアンプ自体に因るものなのか、真空管に因るものなのか、今のところ分かりません。
他の300Bや五極管、ビーム管、プリ管も含め色々試してみたいと思っております。