2009年3月27日金曜日

Alberta Adams / Detroit Is My Home


『Alberta Adams / Detroit Is My Home』 (Eastlawn Records ELD-017)
1. Keep On Keepin' On
2. I'm Worried
3. Hello Little Boy
4. Tired of Being Alone
5. Detroit is My Home
6. Struttin' My Stuff
7. Always Home
8. Wet Clothes
9. Doctor Blues
10. Long Gone
11. I'm On the Move/Every Day
12. Hopin' It Will Be Alright

事ある毎に“Detroit's Queen of the Blues”と称される、ジャンプ・ブルース・シンガーのアルバータ・アダムス。
1920年代生まれ。一説には21年とも22年ともいわれておりますが、最近では17年という説まで出てきてます。これが本当だと、ジョン・リー・フッカーやウォルター・ホートンと同い年ってことになる。え~、そんなお年だったのって感じなのですが、見た目からするとB.B.キングと同じ位じゃないかなと思うんですけど。

それはさておき、30年代後半位からプロのシンガーとして歌い始め、デューク・エリントンやルイ・ジョーダン、ワイノニー・ハリス、T-ボーン・ウォーカーなどとも共演したことがあるそうで、いずれにしても、超ベテラン・シンガーであることに間違いはない。

50年代にはレナード・チェスに認められて、チェスに4曲ですが録音も残しています。実力のあるシンガーなのですが、ソロ・アルバムを出すのは、ず~っと後の1999年になってからなんです。実力を持ちながら録音の機会すら与えて貰えず、消えていったブルース・シンガーは数多くいるといいますから、かなりの遅咲きとはいえ彼女は幸運であったといえます。こういう人達の歌が聴けるのもブルースの醍醐味なんですよね。

今回のアルバムは、通算4作目となる2008年に発売された最新作です。
アルバータ・アダムスを初めて聴いたのは、デトロイトのコンピレーションのライブ・アルバム「Blues From The Heart Vol.3」の中の1曲でした。1997年の録音で、その頃から較べるても声が幾分ガラガラに嗄れてしまってますが、迫力のある図太さは相変わらず凄い。特に、1曲目のバレルハウスの雰囲気を出してるロッキン・ブギなんか、正に打ってつけの1曲で、ノリの良いブギウギ・ピアノと小粋にブラッシングするドラム、それに迫力のあるガラガラのボーカル。最高。冒頭からガツーンとやられました。場末の安酒場で見たら卒倒しそうですよ。

2曲目は一転、ジャジーなバラード。1曲目とは打って変わったジャジーなピアノも印象的だが、それよりも増してアルバータの魂を搾り出すかの如く歌う歌には圧巻。エモーショナルな歌声に感動すら覚えます。

ジャンプ・ブルースの(3)やニューオリンズR&B調の(6)、マンボっぽい(9)も結構好きですね。そして、最後にシークレット・トラックとなってる「Just a Little Bit」。ライブ録音のようだが、これがまた凄まじいド迫力でぶったまげました。90前後とはとても思えません。着包みでも着てるんじゃないかな。

2009年3月19日木曜日

Amos Garrett / Get Way Back : A Tribute to Percy Mayfield


『Amos Garrett / Get Way Back : A Tribute to Percy Mayfield』 (Tom's Cabin WHCY3)
1. My Jug and I
2. Pretty Eyed Baby
3. Stranger in My Own Hometown
4. Never Say Naw
5. The Country
6. To Claim It's Love
7. River's Invitation
8. Fading Love
9. Get Way Back
10. Ha Ha in the Daytime
11. Lost Mind

エイモス・ギャレットを知る切っ掛けとなったのが、ポール・バターフィールズ・ベター・デイズの1stアルバム。ホワイト・ブルース史に燦然と輝くこの歴史的傑作盤で、エイモスのみならず、ボビー・チャールズやジェフ&マリア・マルダーなども知る事となり、ウッドストック・サウンドにのめり込む切っ掛けにもなったのです。ポール・バターフィールドのハーモニカの素晴らしさも然る事ながら、エイモス・ギャレットのギターも負けず劣らず絶品で、特に「プリーズ・センド・ミー・サムワン・トゥ・ラブ」での煌びやかに流れるようなギターには惚れ惚れとしたものです。あと、マリア・マルダーの「真夜中のオアシス」はもっと最高の出来で、この曲を聴いてからかな、ソロアルバムを買ったのは。

久しぶりにソロアルバムを引っ張り出して聴いてますが、しかし、なんて気持ちのいいギターを弾く人なんでしょうね。エイモスのギターを“星屑のギター”とよく比喩されますが、これ以上イメージにぴったりの言葉はないです。特徴的なのはチョーキングのタイム感もですが、やっぱりチョーク・ダウンなんですよね。この時の何とも言えない浮遊感、ふわっと漂い流れるような感じはほんと癒されますよ。そして、歌声は渋いバリトン。テレキャスターと帽子がトレードマークで、ダンディという言葉が相応しい。ほんと渋すぎ。

前作の「Acoustic Album」から凡そ4年ぶりとなる新作は、パーシー・メイフィールドのトリビュート・アルバムで、エイモス自身いつかは作りたいと思ってたそうだが、エイモスのサウンドには打ってつけの企画ですね。まず、思ったのは選曲。通好みの渋い選曲ですね。オーティス・ラッシュも「Ain't Enough Comin' In」で演奏した(1)やプレスリーお得意の(3)、ゲイトマウス・ブラウンもやった有名曲(7)なんてのもあるが、あまりカヴァーされることの少ない曲ばかりで、本人が好きな曲を選んだんでしょうが、この辺もクセモノぶりを発揮してますよね。大体、テレキャスター弾きにはクセモノが多い。アルバート・コリンズとかスティーブ・クロッパー、コーネル・デュプリー、キース・リチャーズにウィルコ・ジョンソン。若手ではタブ・ベノワとかね、大好きなんですけど。しかし、今回のアルバムではテレキャスターではなくフルアコを中心に使用してるみたいで、柔らかくマイルドなトーンになってますね。弾きまくりというわけではありませんが、要所要所で円熟味を増したギターを聴かせてくれます。ほんと痺れるんです。歌声は昔程の艶は少々なくなってしまったが、バリトン・ヴォイスに渋みが増して味わい深い。パーシー・メイフィールドということもあり、歌に力を入れた感じは受けます。本当に歌心のあるアルバムで、聴けば聴くほどジワジワっと染みてきましたよ。落ち着きます。

2009年3月14日土曜日

William Clarke / One More Again!


『William Clarke / One More Again!』 (Watchdog WD1010)
1. Untitled Instrumental
2. I Got My Bags Packed
3. Five Card Hand (alt take)
4. Home Is Where the Heart Is (slow)
5. Letter From Home (alt take)
6. Educated Fool (alt take)
7. When I'm With You Baby
8. Untitled Instrumental
9. That Ain't the Way to Do It
10. Home is Where the Heart Is (fast)

ウィリアム・クラークの初期のアルバム、「Hittin' Heavy」とか「Blues from Los Angeles」とか聴きたくて探してはみたけれど、やっぱり見つからなくて、CDにもなってないしね、諦めてたら、数年前「The Early Years」というCDが発売された。Vol.1とVol.2があって、Vol.1にはしっかりとハリウッド・ファッツの名がクレジットされてる。もう速攻で注文しましたよ。アリゲーターのほうがレベルは上なんだけど、ウィリアム・クラークとハリウッド・ファッツが共演してる音源つうだけでも貴重で感動もんでした。このアルバムをプロデュースしたのが未亡人のクラーク夫人で、数多くの未発表音源を所蔵してるらしく、それらを編集したアルバムも今迄に何枚か発表してます。

2008年に発売された「One More Again!」もそんな未発表音源集で、亡くなる3年前の1993年の録音です。この頃はほんと脂の乗り切った絶頂期で、アリゲーターと同様に最高のサウンドなんですよね。(2)での師匠ジョージ・スミス譲りの図太いクロマチック・ハープは、五臓六腑にジンジン響いてきます。続く(3)は典型的なウエストコースト・サウンドで、アレックス・シュルツのT-ボーン・ウォーカーばりのテキサス・ギターがなかなかいい。アレックス・シュルツはロッド・ピアッツァのマイティ・フライヤーズにもいた人で、バッキングとかも凄くジャジーでセンスありますよね。「The Hard Way」でも演奏していたロイ・ブラウンの(5)。こちらはホーン・セクションが入ってないバージョンで、ゴージャスさはないが代わりにギターがシンプルのオブリガートを決めてます。(8)(9)辺りのふくよかなホーン・ライクなハープは、五臓六腑にしみるな。

ウィリアム・クラークはジャズ・オルガンが好きだったそうで、ジャジーでスウィングしてるグルーヴはこの辺りからの影響のようです。それにシカゴ・ブルースを混ぜ合わせたのがウィリアム・クラークのサウンドということになるのですが、これはウエスト・コーストの基本的なサウンドでもあるんですよね。何回聴いても聴き飽きません。

2009年3月10日火曜日

Hollywood Fats & The Paladins - Live 1985


『Hollywood Fats & The Paladins - Live 1985』 (TopCat TCT6082)
1. Hideaway
2. She's Fine
3. I've Tried
4. Lawdy Lawdy Miss Mary
5. Whole Lotta Shakin'
6. The Groove
7. Rooster Blues
8. Tear It Up
9. That Will Never Do
10. Let's Have A Party
11. Mystery Train
12. Sidetracked
13. Goin' To Get My Baby

ハリウッド・ファッツはウェストコーストのジャンピン&スウィンギーなブルース・ギタリストで、フェイバリット・ギタリストの一人です。
10才でギターを始め、13才で既にロサンゼルスのクラブで演奏してたというから凄い。マジック・サムやシェイキー・ジェイク、アルバート・キング、ジュニア・ウェルズ&バディ・ガイらに可愛がられ、教えを受けたようです。ハリウッド・ファッツというニックネームはジュニア・ウェルズとバディ・ガイが付けたらしい。

初レコーディングはライブですが、1972年のワッツタックス。アルバート・キングのバックでギター弾いてるのがハリウッド・ファッツです。当時、まだ弱冠18才。あの大舞台で本当に凄いや。その後は、ジョン・リー・フッカーやシェイキー・ジェイクのレコーディングに参加したり、マディのバンドにも在籍したことがあるらしいですが、ハリウッド・ファッツ名義のアルバムは、後にも先にも1979年のオリジナル・アルバム1枚のみだったのです。他にもっと聴きたいと思ったら、ウィリアム・クラークやジェイムス・ハーマン、スモーキー・ウィルソンなどのアルバムを聴くしかなくって、1986年に32才の若さで亡くなってしまったものだから、ホント録音が少ないんですよね。僕にとってはもう伝説的なギタリストなのです。それが数年前、デルタ・グルーヴがハリウッド・ブルー・フレイムスのアルバム「Road to Rio」で、おまけCDとしてハリウッド・ファッツの未発表ライブCD「Larger Than Life」を付けてくれた時は、ホント驚喜しました。

そして、今回のアルバムはハリウッド・ファッツ名義の2枚目となる貴重なライブ・アルバムです。ちょうど亡くなる1年前にダラスで収録されたライブ。音質はブートレグ並みで、音ゆれとかあってあまり良くないが、演奏はとても熱い。

フレディ・キングの(1)(12)、ジミー・リードの(2)(13)、チャック・ウィリスの(4)、ジェリー・リー・ルイス(5)、ライトニン・スリム(7)、リトル・ミルトン(9)、エイモス・ミルバーン(10)、ジュニア・パーカー(11)などなど。カヴァー曲のどれもが、見事にハリウッド・ファッツのカラーに染まってて、サウンドにブレがないんですね。いろんなタイプのギターが弾ける天才肌だったそうだが、やっぱりこのジャンピンでスウィンギーなギターはピカイチ。彼をリスペクトするウェストコーストのギタリストは、今でも数多い。

79年のオリジナルとおまけCDだった「Larger Than Life」、そして、今回のライブ。この3枚は僕にとって、ウェストコーストのブルース&ギターのバイブルみたいなもんです。

2009年3月4日水曜日

Big Walter Horton / Bocce Boogie : Live 1978


『Big Walter Horton / Bocce Boogie : Live 1978』 (TopCat TCT7082)
1. Every Day I Have The Blues
2. Walter's Boogie
3. Trouble in Mind
4. My Babe
5. Cold Chills
6. That's Why I'm Cryin'
7. Bocca Boogie
8. La Cucaracha
9. Sweet Black Angel
10. Baby Please Don't Go
11. Hard Hearted Woman
12. Little Bitty Girl
13. Don't Get Around Much Anymore
14. Tell Me Why
15. Breakin' with the Earl

1978年9月、ロードアイランドにあるBocce Clubで収録されたライブだが、これはジョニー・ニコラスの結婚披露パーティーの為にセッティングされたもので、ウォルター・ホートンを呼んじゃうなんて、なんと粋なパーティーなんでしょうね。
プライベートなライブなので録音状態は良くないが、お客さんの話声など会場のざわめきが終始聞こえてきて、却って生々しいリアリティーがあります。

ホートンは15曲中9曲に参加。シュガー・レイが歌う(1)に続き(2)で登場しますが、ホートン節のハーモニカとバック・バンドのグルーヴ感、もう最高で言葉になりません。次のキー・トゥー・ザ・ハイウェイを想わせる(3)では、ホートンのエモーショナルなハーモニカがとても素晴らしく、涙腺に響いてきますね。リトル・ウォルターの(4)もタメのある最高のノリで、これはもうかぶりつきでしょう。あと、ホートンが(9)や(10)を演奏してるの初めて聴きました。すごく得した気分。

2009年3月2日月曜日

RJ Mischo / King Of A Mighty Good Time


『RJ Mischo / King Of A Mighty Good Time』 (Challis CHREC118)
1. Cheap Wine
2. Joint!
3. Too Little Love(Too Much Religion)
4. Who's Out There?
5. Crawlin' Kingsnake
6. Greyhound
7. Rj's Back In Town
8. Birds Nest On The Ground
9. I Can't Do Without You
10. Good Bad Co.(Don't Worry)
11. Give It Up
12. Watchdog
13. King Of A Mighty Good Time

RJミショーはウェスト・コーストのハーピストで、まだ10代後半の若い時分からプロとして活動し始め、ミネアポリス時代はモジョ・ビュフォードやサニー・ロジャーズ、パーシー・ストローザーらと活動していたそうです。

シカゴには近いので、その辺りの連中との付合いも深かっただろうと思います。サウンドも50年代のヴィンテージなシカゴ・ブルースが感じられます。

しかし、本拠地をシカゴではなくウェスト・コーストに移したのは、リンウッド・スリムの誘いなのか、それとも性に合ってるからなのか、どうなんでしょうね。

RJのサウンドはウェスト・コーストに移ってからのしか聴いてないが、ヴィンテージ・シカゴ・ブルースを描写しつつも、軽快なスピード感やロッキンな豪快さは、やはりウェスト・コーストのサウンドだなって感じです。ハーモニカのテクニックも抜群で、図太くはないが割りと黒さのあるボーカルもなかなかカッコいい節回しで好きなところですね。

今回のアルバムも、1曲目から如何にもRJミショーって感じのロッキン・ブルースから始まりますが、ここ最近はずっと一緒にやってた、ロウダウンでいなたいギターを弾く職人フランク・ゴールドワッサーが参加していないのはちょいと寂しいな。

代わりにノルウェー出身のキッド・アンダーセンがギターを弾いてます。自身のアルバムは聴いた事がないのですが、スウィンギー&ジャンピンなギタリストでオーティス・ラッシュを想わせる部分も持ち合わせてるみたいです。チャーリー・マッスルホワイトのリード・ギタリストを務めたこともあり、最近はリック・エストリン&ザ・ナイトキャッツに参加してるようです。実は先のエルヴィン・ビショップのアルバムにも参加してたんですよね。これからこの名前が至る所で登場しそうで、ウェスト・コースト・ファンとしては押さえておきたい人かな。

キッド・アンダーセンを得て少々面持ちが変わったが、我が心石に匪ず転ず可からずで、RJミショーの確固不動のサウンドはなお健在で嬉しい限りです。

アフリカンなリズムにリゾネーターやシタールまで使った神秘的なデルタ・ブルース(3)は、変り種で結構面白かったが、やはり(6)(7)(8)辺りのロッキン・ブルースの怒涛の攻撃はたまらんです。特に(8)、イントロのハーモニカに絡むギター、このバンド・アンサンブルのカッコよさ、抑揚のある節回しのボーカル。ほんと最高にカッコいい。

ライス・ミラーのスロー・ブルース(9)でのハーモニカは深いし、モジョ・ビュフォードの(12)でのタメたハーモニカも痺れます。